白地に銀文字で『未来日記』と書かれた表紙。シンプルであったが、馴染みのある“未来”と“日記”という漢字に誘われ手に取ってみた。未来日記って…?
未来日記
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中をのぞいてみると、表紙からは想像もつかないカラフルで可愛らしい版画が目の前に広がった。版画の隣には日付をはじめに繁体字で綴られた文章が添えられている。どうやら絵日記のようだった。
版画たちのあたたかな雰囲気にすっかり虜になった。文章はというと、うーん…。知っている漢字もしばしば見られるが、ほとんど分からず頭が混乱しそうになる。でも、絵と照らし合わせながら連想してみると…!?なんだかわかる気がするぞ。
パッと開いた3月3日のページ。絵には、宇宙船に乗っている少女がトランシーバーのようなもので誰かと会話している姿が。手からは電気が放出されているようにみえる。この子は宇宙人なのだろうか?
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日記を読んでみる。
“嗶啵嗶啵”
なんだこの漢字は!みたことない…と思いながら次の文をみると、
“嗶嗶…啵啵…嗶”
同じ漢字が連なり、繰り返されている…ということはなにかの擬音なのか…?トランシーバーが「ビーー、ビーー」となっている音のような感じもする。
“這裡是宇宙防衛隊.聽到請回答”
「宇宙防衛隊」と「回答」という漢字は読めた。「聽」は「聴」に似ているし、この少女は宇宙人と話しているのかな。
…と絵と日記を照らし合わせて想像してみると「われわれは宇宙人だ、聞こえたら応答せよ」という解釈になった。うんうん。なんかそれっぽい。
翻訳機にかけてみると、
ピッピッ ピッピッ…ピッピッ…ピッ… こちらは宇宙防衛軍。聞こえたら答えてください。
となった。…近い!!宇宙人ではなく、「宇宙防衛軍」なんだ!この少女はその一味なのだろう。そもそも「われわれは宇宙人だ」と名乗るのは日本の創作物特有の台詞らしい。日本ではこれがお決まりであるが、英語では「Take me to your leader」(指導者に会わせて欲しい)なのだそう。日本の表現よりも存在が具体的で見透かされているようでゾッとする。台湾ではどうなのだろうと調べてみたが、なかなか出てこず。知っている方がいたら教えてください…!(ちなみに台湾・中国では「宇宙人」ではなく「外星人」と書くみたい)
そしてやっぱり「嗶嗶」は擬音語だった。想像していたことが的中するとなんだか嬉しい気持ちになる。こうして日本語と比べてみると、複雑な機械音感が繁体字の中にあってかっこいい。日本には漢字を使った擬音語がないのでなんだか新鮮。
とこのように中国語を全くかじったことのない私でも割と読み取れてしまう。子どもの頃に、絵をたよりに想像しながら楽しんだ絵本読みの感覚を思い出した。この本は1ページの文章量も少なく、難しい単語もあまりない。アジア本初心者さんに丁度いい。
読み方も様々。この本は日記形式になっているので、1月1日から読んでいくのもあり。読み始めた日と日付を合わせて、そこから毎日1ページずつ読んでいくのもあり。気になる日を追って読んでみるのもいい。私は最初に自分の誕生日を開けて読んでみた(先に楽しみを見てしまうタイプ)。私的には、365日のベッドタイムストーリーとして寝る前に次の日のページを開け、明日はどんな1日になるのか想像しながら寝たいなと思う。
未来日記という想像の作品に私自身も想像をふらましてみる。もしその解釈が本当とは違っていたとしても、自分でしか想像できないストーリーとして楽しんだり、翻訳アプリで翻訳してみてその違いと違和感を感じてみるのもいいだろう。本というと「ちゃんと読まなければいけない!」というイメージが強かったが、このような楽しみ方もありなのではないだろうか。
私は今回「知っている文字が書かれていたから」というシンプルな選び方をしたが、アジア本を初めて手に取ってみて思ったのは、初心者さんには絵付きのものがおすすめだということ。子どもの頃に絵本を読んでいたように、絵から想像力をふくらませて読んでみるというような感覚をまたアジア本で感じて欲しい。
3月3日の日記はたまたま宇宙の話で未来感が満載だったが、自業自得で洗濯物畳みに追われる日があったりと現実と非現実の狭間にある未来日記。また教訓になることもあったりとエピソードはさまざま。この本を読んでいる途中だが、まだまだ楽しませてくれそうだ。
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藤本
東アジア本の楽しみ方